| メンバー | 担当 |
|---|---|
| あい | ギター・ボーカル |
| なずな | ギター |
| カノ | ベース・コーラス |
| まゆ | ドラム |
大阪発の4人組バンド、ハク。は、2019年、高校生向けの音楽サークルで出会った4人によって結成されました。
もともと、あいとまゆ、なずなとカノがそれぞれ同じ高校に通っていました。別々の学校からサークルへ参加した4人は、担当楽器が重ならなかったことから、先生にバンドを組むよう勧められたのです。
当初から特定の音楽性やプロデビューを目標にしていたわけではありません。あいが持ち込んだオリジナル曲にほかの3人が音を重ね、少しずつハク。の音楽が形になっていきました。
その後、2021年に「十代白書2021」でグランプリを獲得。2025年9月には「それしか言えない」でトイズファクトリーからメジャーデビューを果たしています。
4人はそれぞれ、どんな音楽に出会い、どのような経緯で一緒に演奏するようになったのでしょうか。
| 音楽史の段階 | ハク。の歩み |
|---|---|
| 結成前の音楽活動 | あいは吹奏楽と弾き語り、なずな・カノ・まゆは軽音楽部などで音楽を経験 |
| メンバーの出会い・結成 | 2019年、高校生向け音楽サークルで出会った4人が結成 |
| 初期作品 | 「ワタシ」を制作し、2020年に初音源「アップルパイ」を公開 |
| 活動の転機 | 2021年「十代白書2021」グランプリ、2022年『若者日記』発売 |
| 音楽性と活動の発展 | 2023年に初フルアルバムを発売。共同制作やSNSでの認知拡大も進む |
| メジャーデビュー | 2025年「それしか言えない」でメジャーデビュー。2026年にメジャー1stフルアルバムを発売 |
ハク。結成前|4人が音楽を始めたきっかけ
ハク。の4人は、同じ音楽を聴き、同じ楽器を習って育ったわけではありません。
幼い頃から歌が好きだったあい、軽音楽部でギターを弾いていたなずな、友人の誘いでベースを始めたカノ、エレクトーンからドラムへ進んだまゆ。それぞれに音楽との出会いがありました。
あいは吹奏楽部の先生との出会いからギター・作曲へ
ギター・ボーカルのあいは、幼い頃から歌うことが好きでした。
合唱部に入っていたいとこの影響もあり、家族と車に乗っているときにはアンジェラ・アキの曲などを歌っていたと、2022年のSPICEのインタビューで振り返っています。
音楽への向き合い方が大きく変わったのは、中学校の吹奏楽部でした。
入部時にはサックスを希望していましたが、顧問の先生に勧められてパーカッションを担当することになります。
その先生は、楽譜に書かれた音の強弱や一音ごとの表現にも、どのような意味があるのかを教えてくれる人だったそうです。
あいは、トライアングルの鳴らし方一つにも工夫を重ねるようになりました。楽譜どおりに演奏するだけではなく、音に感情や情景を込める面白さを知った経験でした。
ギターを始めたのは、中学3年生の高校受験期です。
受験勉強に疲れていたある日、京阪モールの催事場で販売されていたウクレレとギターを偶然手に取りました。
そこでアコースティックギターに興味を持ち、一緒にいた家族に買ってもらったことが、弾き語りを始めるきっかけになりました。
高校に進学すると、同級生が高校生ライブイベント「BREAK OF LIMIT」に出演している姿を目にします。その友人は、のちにハク。のメンバーが出会う音楽サークルへ、あいを連れていく人物でもありました。
友人の演奏に刺激を受けたあいは、高校1年生の冬、弾き語りのためのオリジナル曲を初めて制作します。
これはハク。結成以前の作曲経験です。バンドとして最初に制作する「ワタシ」とは、別の段階にあたります。
ハク。を結成してからも、メンバーが曲を聴いて感想を返してくれることが、制作を続ける支えになっていきました。
曲を作らないという選択肢はない
あい/出典:SPICE「ハク。が揺れ動く想いと激動の1年から生まれたミニアルバム『若者日記』を語る」
中学生の頃に教わった音の表現と、高校生になって始めた作詞作曲。その両方が、ハク。で曲を作るあいの出発点になりました。
なずなとカノは高校の軽音楽部でバンドを組んでいた
ギターのなずなは、家族が車や家で音楽を流していたため、幼い頃から音楽が身近にある環境で育ちました。
小学6年生のクリスマスにはギターをプレゼントされ、中学校では友人とバンドを組んで軽音楽部で活動していました。
高校に進学してからもバンド活動を続け、同級生だったカノと一緒に演奏するようになります。
当時はSCANDALやSHISHAMOなどの楽曲をコピーしていました。なずなは高校時代、家族が好きだったMrs. GREEN APPLEの音楽にも惹かれ、ライブへ足を運んでいます。
一方、ベースのカノは、幼い頃からORANGE RANGEをよく聴いていました。姉が聴いていた音楽が車の中でも流れていたといいます。
家族がドラムを演奏していたこともあり、楽器やライブハウスは身近な存在でした。
ただし、最初からベースを担当すると決めていたわけではありません。
高校1年生のとき、同じクラスのなずなから軽音楽部の見学に誘われたことが、バンド活動の直接のきっかけになりました。
カノはFenderNewsのインタビューで、家族がドラムを演奏していたので自分もできると思っていたものの、実際には8ビートをうまく叩けなかったと話しています。
ギターもコードを押さえるのが難しく、残った選択肢がベースでした。しかし、もともと低音そのものが好きだったため、ベースを始めることになります。
こうして同じ高校で活動していたなずなとカノは、学校の外でもバンドをやりたいと考えるようになりました。
その希望が、のちにあいとまゆに出会うきっかけを作ります。
まゆはBIGBANGのライブをきっかけにドラムを始めた
ドラムのまゆは、3歳頃からエレクトーンを習っていました。
高校受験を機にいったんエレクトーンをやめましたが、高校に入ってから再び音楽をやりたいと思うようになります。
その気持ちを後押ししたのが、BIGBANGのライブでした。
まゆは、BIGBANGのライブを観て音楽をやりたいと思い、軽音楽部へ入ったとrockin’on.comのインタビューで語っています。
楽器を選ぶ際には、以前のエレクトーンと同じように両手両足を使って演奏できることから、ドラムに興味を持ちました。
ハク。を始めてからは羊文学やきのこ帝国の音楽もよく聴くようになり、気に入ったドラムのフレーズを自身の演奏へ取り入れることもあったそうです。
本人によれば、「直感way」や「ふたり基地」などの演奏にも、そうした経験が関係しています。
あいの吹奏楽、なずなの軽音楽部、カノのベース、まゆのエレクトーンとドラム。4人の楽器との出会いはそれぞれ異なっていました。
Fender公式の「SESSIONS in TOKYO」では、メンバーが楽器を始めたきっかけについて語り、演奏も披露しています。
ハク。の結成経緯|高校生4人をつないだ音楽サークル
2019年、2つの高校から集まった4人は、音楽の専門学校が高校生向けに開いていたサークルで出会いました。
4人は最初から友人だったわけではありません。あい・まゆと、なずな・カノという2組が、先生の提案によって一つのバンドになったのです。
2019年、別々の高校から集まった4人で結成
ハク。の結成日は、ホットスタッフ・プロモーションのインタビュー資料で2019年5月8日と紹介されています。
当時、あいとまゆは同じ高校に通っており、なずなとカノも別の高校で一緒にバンドを組んでいました。
4人が参加していたのは、高校生ライブイベント「BREAK OF LIMIT」から生まれた音楽サークルです。
音楽の専門学校が高校生を対象に開いていたもので、放課後に楽器や音楽について学べる場所でした。
カノとなずなは、学校の外でもバンド活動をしたいとサークルの先生に相談していました。
その頃、あいとまゆもサークルへ参加していましたが、2組は互いにほとんど面識がありませんでした。
そこで先生が注目したのが、4人の担当パートが重ならず、ギター・ボーカル、ギター、ベース、ドラムという編成を組めることでした。
先生に一緒にバンドを組んでみるよう勧められたことから、4人での活動が始まりました。
初対面の印象は、2組でかなり違っていたようです。
あいとまゆは比較的おとなしく、カノとなずなは初対面でも明るく話しかけていました。
2025年のWEB HOTのインタビューでは、あいはカノとなずなを華やかな印象の2人だったと振り返り、まゆも2人の元気な様子を覚えていると話しています。
あいは人見知りだったものの、実際に顔を合わせたときは自然に話すことができ、むしろその後LINEで初めて連絡するときのほうが緊張したそうです。
こうして生まれたハク。ですが、結成当初からプロになることを決め、明確な音楽方針を共有していたわけではありません。
あいは2023年のぴあ音楽のインタビューで、当時は特に音楽性を話し合って決めたことはなく、高校生の頃によく聴いていたギターロックや、自分の心が動くものから曲を作っていたと説明しています。
バンド名「ハク。」の由来は白とサークル
ハク。という名前には、バンドを始めた当時の考え方と、4人が出会った場所の両方が関係しています。
あいは2022年のSPICEのインタビューで、サークルの先生からどんな名前にしたいのか尋ねられた際、カタカナの名前を希望したと話しています。
そこで選ばれたのが「ハク」という言葉でした。
ハクは「白」を意味し、当時はロックにもインディの音楽にも挑戦してみたいという気持ちがあったことから、さまざまな色に染まれる白という意味づけが生まれました。
名前の最後に付いている「。」は、4人が音楽サークルで出会ったことに由来します。
「ハク=白」と「。=サークル」。 バンド名には、特定の音楽性に縛られずに演奏したいという思いと、4人が出会った場所が重ねられていました。
また、活動初期には「ありのままごころ」という言葉も大切にしていました。
これは専門学校の先生から、バンドとして大切にするものを持ったほうがよいと助言され、あいが「ありのままの素直さ」と「人間らしい心」を大切にしたいと考えて付けたものです。
バンド名を付けた経緯と、活動を続けるなかで言葉にした考え方は別の出来事ですが、どちらにも自分たちの感情や表現を大切にする姿勢が表れています。
最初のオリジナル曲「ワタシ」はライブハウスでの体験から誕生
ハク。として最初に作ったオリジナル曲が「ワタシ」です。
あいがこの曲を書くきっかけになったのは、大阪のライブハウスESAKA MUSEで開催された「YAMAMUROCK FES.」を観に行った経験でした。
それは、あいにとって初めてライブハウスへ足を運んだときのことです。
ステージ上のバンドが語る言葉や、音楽を好きな人たちが一つの場所へ集まっている様子に、強く心を動かされました。
演奏する側が観客へ感謝を伝える姿にも勇気づけられ、その体験が曲になりました。
当時のあいは高校生で、感じたことを自分の言葉とメロディーにしていました。
ただ、完成した曲に十分な自信があったわけではありません。
2025年のrockin’on.comのインタビューでは、「ワタシ」を制作した際、悩みながら曲を書き、これでよいのかと思いながらメンバーへ送ったことを振り返っています。
ところが、あいから届いた曲は、カノにとって忘れられないものになりました。
カノは、歌詞に込められたあい独特の視点に驚き、この人と一緒に演奏し続けたいと思ったそうです。
ほかの人にはベースを弾かせたくない
カノ/出典:rockin’on.com「4ピースバンドの新星・ハク。がトイズファクトリーからメジャーデビュー!」
その後もカノにとって「ワタシ」は特別な曲であり、初めてのワンマンライブで演奏した際には、曲を聴いた当時の気持ちを思い出して涙が出そうになったと振り返っています。
あいが自分の体験から書いた曲が、別の学校から集まったメンバーに届いたこと。そこから4人で演奏する意味が少しずつ強くなっていきました。
初期活動と『若者日記』|高校生バンドから音源リリースへ
ハク。は2019年の結成後、ライブ活動とオリジナル曲の制作を重ねていきました。
2020年には初めて音源を公開し、翌2021年には「十代白書2021」でグランプリを獲得。高校生の頃に作り始めた音楽が、少しずつ外のリスナーへ届くようになります。
初音源「アップルパイ」とオリジナル曲の制作
2020年、ハク。は初音源となる「アップルパイ」を音楽投稿サイト「Eggs」で公開しました。
ハク。として最初に制作した曲は「ワタシ」ですが、初めて公開した音源は「アップルパイ」です。
「アップルパイ」は、あい自身の恋愛経験をそのまま歌った曲ではありません。
当時、キャッチーな曲を作りたいと考えていたあいは、高校の友人たちが話していた恋愛の話を耳にしながら、そこから曲を書いていきました。
あいはSPICEのインタビューで、予想していた以上に反響があったことに驚き、自分たちにとっては大きな出来事だったと話しています。
この初期には「BLUE GIRL」や「本物」なども制作されました。
「本物」は、音楽サークルへ連れていってくれた友人がバンドを演奏している姿を見て書いた曲です。
あいにとって、その友人は憧れを感じる存在でした。自身が音楽活動を始めるきっかけを与えてくれた人物が、作品の題材にもなったのです。
初期の曲には、身近にいる人との会話、ライブハウスでの出来事、友人の演奏を見て感じたことなど、高校生だったあいが実際に触れた世界が使われています。
「アップルパイ」が音源として公開された一方、最初に作った「ワタシ」は2021年4月21日に3枚目のデジタルシングルとして配信され、公式ミュージックビデオも公開されました。
「十代白書2021」グランプリが活動の転機に
初期のハク。にとって大きな出来事となったのが、2021年3月29日の「十代白書2021」グランプリ獲得です。
十代白書は、関西のライブハウスが中心となって実施する、10代のアーティストを対象とした才能発掘プロジェクトです。
ハク。はこの大会でグランプリを獲得し、活動初期の大きな実績を残しました。
しかし、本人たちにとって、注目されることは喜びだけではありませんでした。
2021年を振り返ったあいは、最初は何も分からない状態で活動しており、バンドの名前が先に広まっていくことに不安を感じたと話しています。
同年にはオリジナル曲を次々と配信し、「KANSAI LOVERS 2021」ではオープニングアクトも務めました。
活動の機会が増える一方、4人は演奏やバンド内のコミュニケーションにも向き合うようになります。
あいは2022年のインタビューで、一時期メンバーの気持ちが離れかけたこともあったと明かしています。
ただ、その経験を通じて、身近な相手だからこそ言葉や接し方に気をつけ、互いの考えを聞くようになったと振り返っていました。
グランプリ獲得は、ハク。の名前を広める出来事であると同時に、4人がバンドを続けるために必要なことを考える時期とも重なっていました。
「カランコエ」と初ミニアルバム『若者日記』
2022年1月19日、ハク。は初のミニアルバム『若者日記』をリリースしました。
「ワタシ」「BLUE GIRL」「本物」「アップルパイ」など、それまでに制作してきた楽曲が収められた作品です。
なかでも「カランコエ」は、あいが当時の社会の状況から着想を得て作った曲でした。
制作のきっかけは、2020年の新型コロナウイルス感染拡大期です。
世の中が緊張した空気に包まれていた頃、あいのもとに「#うたつなぎ」という歌唱動画のリレー企画が回ってきました。
あいは、せっかく歌をつなぐのであれば、その時代の出来事を曲として残したいと考えます。
当初は曲名が付いていませんでしたが、後に花言葉などを調べるなかで「カランコエ」という花の名前に出会い、タイトルに選びました。
「アップルパイ」では身近な友人の話から曲を作り、「ワタシ」ではライブハウスで感じたことを表現していました。
「カランコエ」は、そうした身近な経験に加え、社会で起きていることを音楽に残そうとした作品です。
『若者日記』というタイトルのとおり、初期の作品には、その時々に見聞きしたことや感情が刻まれていました。
アルバム発売後の2022年3月には大阪で初のワンマンライブも開催。自分たちで作った曲を聴いてもらう活動は、次の段階へ進んでいきます。
ハク。の曲作り|あいの言葉が4人のサウンドになるまで
ハク。の楽曲は、主にあいが作詞作曲を担当し、メンバー4人で演奏やアレンジを組み立てています。
ただし、あいが作ったデモをそのまま演奏して完成させるだけではありません。
バンドを続けるなかで、歌詞の書き方、曲の構成、ギターの音、メンバーへの伝え方は少しずつ変わっていきました。
あいの作詞作曲を支える日常の風景と音楽的ルーツ
あいの作詞に影響を与えたアーティストの一つが、サカナクションです。
中学生の頃に吹奏楽部の先生から音の表現を教わったあいは、その後、サカナクションの山口一郎が音楽に向き合う姿勢にも刺激を受けました。
2022年のSPICEのインタビューでは、言葉をどこで区切るか、どこを伸ばすかといった表現にも興味を持つようになったと話しています。
また、rockin’on.comのインタビューでは、サカナクションに加えて中村佳穂や青葉市子の音楽にも惹かれたと語っています。
特に好きなのは、普段から使われる言葉でも、組み合わせ方によってその人だけの表現になるところでした。
あいは、自分の体験をそのまま説明するのではなく、聴いた人が別の情景を思い浮かべられるような言葉の選び方を意識しています。
その材料になるのは、日常で目にした風景や、感情が動いたときに浮かんだ言葉です。
曲の作り方も一つではありません。
メロディーを作りながら同時に言葉を考えることもあれば、曲の枠組みを先に作り、後から歌詞を付けることもあります。
2025年のrockin’on.comのインタビューでは、曲を完成させた瞬間だけではなく、ライブで何度も歌ううちに、自分が表現したかったことを実感する場合もあると語っていました。
作ったときの気持ちだけで完結するのではなく、演奏を重ねるなかで曲への理解が変わることも、あいの制作にとって大切な経験になっています。
デモを4人で仕上げる制作スタイルと試行錯誤
結成初期のハク。は、高校生の頃によく聴いていたギターロックを背景に曲を作っていました。
あいがオリジナル曲のデモをメンバーへ送り、ほかの3人が反応を返してくれることは、当初から大きな喜びだったそうです。
しかし、制作を続けるうちに、あいは自分の頭の中にある音をメンバーへ伝える難しさを感じるようになります。
2023年のぴあ音楽のインタビューでは、言葉やイメージで曲を説明しても、それがほかの3人へ伝わっているのか分からないことがあったと語っています。
一方的に具体的なフレーズを決めてしまってよいのか、それぞれが演奏したい音を持っているのではないか、という迷いもありました。
こうした問題に対して、4人は制作を重ねながら演奏やアレンジの方法を探っていきます。
その様子がよく分かるのが、2025年のWEB HOTのインタビューで語られた「dedede」の制作です。
この曲は、最初に作ったデモでは、完成版よりもテンポが遅く、グルーヴを重視したアレンジでした。
ところが、スタジオで曲の構成を考えていくなかで、ドラムンベースのような速いテンポへ変更することになります。
まゆは、それまでのテンポで練習していたため、突然速くなった演奏に苦戦したと振り返っています。
データをやり取りしていた段階とは異なる形に、スタジオで曲が変わっていったのです。
同じインタビューでは、「頭の中の宇宙」の演奏についても、なずなが壮大な音をイメージしながらギターフレーズを作ったことを明かしています。
メンバー同士で音のイメージを共有し、実際にスタジオで合わせながら曲を作る方法が、演奏の中にも表れるようになりました。
河野圭との制作で広がったギターの音とアレンジ
ハク。の曲作りに新しい視点をもたらした人物の一人が、音楽プロデューサーの河野圭です。
2023年の初フルアルバム『僕らじゃなきゃダメになって』では、河野とともに制作を進めました。
あいは、それまで自分の頭の中にあるイメージを言葉で説明していたものの、具体的な音として伝えることに難しさを感じていました。
河野は、あいが考えている音楽をくみ取り、別のサウンドやアレンジの方法を実際に提示してくれる存在だったといいます。
例えば、なずなのギターは、それまで浮遊感のある空間系の音を使うことが多くありました。
河野からは、もっと歪みを効かせた音を使って、新しいハク。を出してみてはどうかという提案もありました。
また、あいが弾き語りのデモを持ってきた際には、演奏のリズムや音の出し方について助言を受けることもありました。
さらに、あいは河野から曲の構成について指摘され、自分たちの音楽には一般的な曲の展開と違う部分があることにも気づきます。
それまで感覚的に作っていたフレーズや曲の展開を、なぜその形にするのか考えながら組み立てられるようになったことは、大きな変化でした。
rockin’on.comのインタビューでは、河野との制作によって、あいが新しく知ったアレンジをほかのメンバーへ伝えることも増えたと明かしています。
その結果、各メンバーがこれまで演奏してこなかったフレーズへ挑戦する場面も生まれました。
まゆは難しいドラムのアレンジを演奏するために個人練習を重ね、なずなも新しいギターフレーズに挑戦するようになりました。
カノは、もともとルート音を中心としたベースラインを好んでいましたが、より動きのあるフレーズの必要性を感じるようになります。
自分から新しいベースのアイデアを提案し、それが曲のイメージに合っていれば採用されることもありました。
あいがデモを作り、河野と音を探り、メンバーがそれぞれの演奏を形にする。そうした制作経験によって、ハク。の楽曲の作り方は広がっていきました。
メジャーデビューまでの歩み|「それしか言えない」に至る転機
ハク。は初期作品のリリースとライブ活動を重ねながら、音楽性と活動の場を広げていきました。
2023年の初フルアルバム、2024年のSNSでの反響、2025年のメジャーデビューは、それぞれ異なる形でバンドの歩みを変えた出来事です。
1stフルアルバム『僕らじゃなきゃダメになって』で見せた変化
2023年8月9日、ハク。は初のフルアルバム『僕らじゃなきゃダメになって』をリリースしました。
2022年の『若者日記』が高校生の頃から制作してきた楽曲を中心とする作品だったのに対し、初フルアルバムでは、河野圭との共同制作を通じて広がった音楽表現が取り入れられています。
収録曲の一つ「自由のショート」は、当時のあいが日常生活の中で考えていたことや、気持ちが揺れ動く様子から生まれた曲でした。
曲には、自分自身への迷いや、そこから動こうとする感情が込められています。
一方、サウンド面では、高校生の頃に演奏していたギターロックだけではなく、海外の音楽から受けた影響も曲の構成に表れるようになりました。
あいは、河野との制作を通じて、自分たちの曲には一般的な展開とは違う部分があることに気づいたと語っています。
その特徴を無理に直すのではなく、ハク。の音楽として生かしていくことが、アルバム制作の中で進んでいきました。
2023年の段階で、結成当初の4人による音楽は、より複雑なフレーズや独自の曲構成を持つものへと変化していました。
タイアップやカバー動画から広がった認知
ハク。の音楽がライブハウス以外のリスナーへ広がるうえでは、SNSで公開したカバー演奏も大きな役割を果たしました。
特に反響を集めたのが、MONO NO AWAREの楽曲「かむかもしかもにどもかも!」のカバー動画です。
2023年に投稿したこの動画は、のちに海外にも広まり、多くの人がハク。を知るきっかけになりました。
2025年9月のrockin’on.comのインタビューでは、アメリカをきっかけに動画が大きく拡散され、YouTubeでの再生回数が1500万回を超えていたことが紹介されています。
その一方で、あいはSNSで数字が急に伸びたことに驚きながらも、再生回数や他人の反応に振り回されないようにしていたと振り返っています。
注目されたカバーをきっかけに、ハク。自身のオリジナル曲にも興味を持ってもらえたことを、あいはありがたい出来事として受け止めていました。
2024年には、東京で開催した3日間の自主企画ライブがすべてソールドアウトとなり、8月にはMONO NO AWAREとの対バンも実現しました。
さらに、テレビ東京系の幼児向け番組『シナぷしゅ』の2024年12月の「つきうた」として、「あいっ!」を制作しました。
この曲は番組側からの依頼で生まれた作品です。
あいは、小さな子どもがイントロを聴いたときに振り向いてくれるような曲にしたいと考え、みんなで歌える合いの手や手拍子を取り入れました。
レコーディングではメンバー4人によるクラップを録音したほか、あいが口で楽器の音を表現するなど、音源ならではの工夫も加えています。
2025年には映画『6人ぼっち』の主題歌「南新町」も発表しました。
初期の自主制作とライブハウスでの活動を土台に、カバー動画、タイアップ、映画主題歌など、異なる場所からハク。の音楽が届けられるようになっていきました。
2025年「それしか言えない」でメジャーデビュー
2025年9月10日、ハク。はデジタルシングル「それしか言えない」をリリースし、トイズファクトリーからメジャーデビューしました。
2019年の結成から約6年を経て迎えたメジャーデビューでしたが、最初の楽曲として選ばれたのは、分かりやすいポップソングへ寄せた作品ではありませんでした。
あいは、メジャーデビューの1曲目になるため、強い印象を残す曲を作りたいと考えていました。
rockin’on.comのインタビューでは、シングルらしい曲を求められていたものの、自分が考える表現とは異なるため、別の角度から聴く人へ届く曲を作ろうとしたと話しています。
制作の最初の段階では、コードとドラムを組み合わせたデモを作りました。
そこから音に物足りなさを感じ、リバーブを加えてみると、曲の印象が大きく変わります。
さらにギターを重ね、シューゲイザー的な広がりを持つサウンドへと発展していきました。
早口で言葉を畳みかける部分も、制作の初期段階から考えていたものです。
あいは、MONO NO AWAREのカバー演奏を通じて、自分がほかの人よりも速い言葉を歌えることに気づいたと話しています。
その経験も「それしか言えない」の早口の歌唱表現につながりました。
また、曲のサビでは、早い段階から「それしか言えない」という言葉が浮かんでいました。
あいは、メロディーを鼻歌で入れながら曲の枠組みを作り、伴奏を仕上げた後で歌詞を完成させています。
その歌詞制作は、レコーディングの直前まで続いていました。
2025年のBARKSのインタビューで、カノは録音前夜の出来事を明かしています。
当時、メンバーは同じ部屋に泊まっており、カノが先に寝ようとしたとき、リビングからあいが小さな声で早口に何かを話す音が聞こえてきたそうです。
そして翌日、レコーディングの場では歌詞が完成していました。
あいは、うまく言葉にできない気持ちを曲の中で叫べるようにしたいと考えていました。
言葉にできないことを叫べる1曲になったらいいな
あい/出典:BARKS「ハク。が見つけた自分たちの音…4人で歩む白い地図のその先へ」
完成した曲は、初めてデモを聴いたときにカノが驚いた「ワタシ」と同じように、あいの言葉を中心にした作品です。
ただし、演奏やアレンジは結成当初から大きく変わっていました。
カノは楽曲のベースフレーズに魅力を感じ、まゆは難しいドラムの演奏に挑戦しました。
なずなは、それまで使ったことのなかったワーミーというエフェクターを取り入れ、新しい音の表現へ踏み出しています。
あいが曲の骨格を作り、ほかの3人が自身の演奏を加える。その方法は初期から続いていますが、6年間の経験によって、各メンバーが音に対して提案できることも増えていました。
「それしか言えない」は、そうした変化を経て完成した、ハク。のメジャーデビュー曲となりました。
2026年9月9日には、メジャー1stフルアルバム『世界が変わる時』をリリース。2025年のメジャーデビュー曲に加え、新たに制作した楽曲や初期からの代表曲など、全14曲が収められました。
高校生の頃、別々の学校から集まった4人が音を重ねて始めたバンドは、初めての音源制作、ライブ、共同制作を経験しながら、メジャーレーベルからアルバムを発表するまでになりました。
あいが高校1年生の冬に始めた作詞作曲と、サークルで偶然出会った4人の演奏。その二つが結びついたところから、ハク。の音楽は始まっています。

