Chilli Beans.の始まりをたどると、最初から3人が同じバンドを目指して集まったわけではありません。
Moni、Maika、Lilyは、それぞれ別の憧れから音楽へ進み、同じ音楽塾ヴォイスで学んでいました。
ソロのシンガーソングライターを思い描いていた3人が、先生の提案をきっかけに2019年7月1日に集まったことが、Chilli Beans.の出発点です。
その後、カバー曲を演奏しながら互いの好みを知り、結成直後に最初のオリジナル曲「lemonade」を制作。
その曲には、同じ音楽塾で学んでいたVaundyも制作に加わりました。
なお、初期のインタビューや作品ではボーカルが「Moto」と表記されていますが、2026年春に活動名を「Moni」へ変更しています。
メンバーが交代したわけではなく、MotoとMoniは同一人物です。
| メンバー | 担当 | 音楽の入口 |
|---|---|---|
| Moni(旧Moto) | Vo | YUI |
| Maika | Ba&Vo | 『ハイスクール・ミュージカル』 |
| Lily | Gt&Vo | 『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』、IU |
Chilli Beans.の3人は別々の音楽から始まった
3人には、バンド結成より前にそれぞれの音楽の入口がありました。
共通しているのは、最初から「Chilli Beans.のメンバーになる」ことを目指していたのではなく、それぞれが自分の音楽を求めてヴォイスへたどり着いたことです。
Moni(旧Moto)はYUIに惹かれ、音楽塾ヴォイスへ
Moniは初期の活動ではMoto名義を使っていました。
音楽を本格的にやりたいと思う大きなきっかけになったのが、シンガーソングライターのYUIです。
EYESCREAMの初期インタビューでは、YUIの「Kiss me」や「Get Back Home」など、不思議な雰囲気を持つ曲をよく聴いていたと振り返っています。
YUIも学んでいた音楽塾ヴォイスを知り、入塾。
授業の中でさまざまなジャンルに触れるうち、自分が特に好きなのはポップスだと気づいていきました。
Fenderのインタビューでは、YUIの歌詞や歌い方に惹かれ、「自分もそうなりたい」と思ったことからギターを始めたとも話しています。
憧れたアーティストを追って学び始めたことが、のちに2人のメンバーと出会う場所へつながったわけです。
Maikaは『ハイスクール・ミュージカル』からアーティストを志した
Maikaの原点は、小学3年生ごろに夢中になったディズニー・チャンネルの『ハイスクール・ミュージカル』でした。
歌や音楽を楽しむ登場人物を見て、アーティストという存在に憧れるようになります。
ただ、当時は「音楽をやりたい」と思っても、何から始めればよいのか分からなかったそうです。
中学生になると、学校の音楽室で見つけた音楽塾ヴォイス主催の大会のポスターが一つの転機になります。
塾を主宰する音楽プロデューサー・西尾芳彦による「西尾賞」を取れば入塾できる大会で、Maikaは何年も続けて挑戦しました。
最初の年と次の年は特別賞、3年目は優秀賞。
念願の西尾賞には届かなかったものの、毎年参加する姿を西尾が覚えていたことが、その後の入塾につながったと本人は振り返っています。
ヴォイスではアコースティックギターも学びましたが、ベースを始めたのはChilli Beans.を組むタイミングでした。
Lilyは『ハンナ・モンタナ』とIUから歌とギターへ
Lilyも、子どものころに見た映像作品から音楽へ入っています。
小学生のころに『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』を見て、歌う主人公に憧れ、中学1年生からボイストレーニングへ通い始めました。
ギターとの出会いには母親の存在があります。
韓国の音楽が好きだった母親と一緒にIUの弾き語りを見る機会があり、歌いながらギターを弾く姿に惹かれてアコースティックギターを始めました。
その後はオーディションにも挑戦しましたが、思うような結果にはつながらず、母親の勧めもあって音楽塾ヴォイスへ入ります。
のちのインタビューではJohn MayerやJimi Hendrixも好きな音楽家として挙げており、ギタリストとしての興味も深まっていきました。
こうして、YUIから始まったMoni、『ハイスクール・ミュージカル』から始まったMaika、『ハンナ・モンタナ』とIUから始まったLilyが、同じ場所で音楽を学ぶことになります。
音楽塾ヴォイスの公式YouTubeでは、3人自身が入塾当時や作曲、レッスン、デビュー後の変化を振り返っています。
音楽塾ヴォイスで3人が出会い、Chilli Beans.を結成
同じ音楽塾にいた3人ですが、最初から仲の良い友人同士でバンドを計画していたわけではありません。
3人ともシンガーソングライターコースに在籍し、一人で音楽活動をしていくイメージを持っていました。
そこへ先生から「3人でバンドをやってみたら」という提案が入り、別々に歩いていた3本の線がつながります。
2019年7月1日、先生のひと言で3人が初めて集まった
J-WAVEで3人が結成当時を振り返った際、初めて3人が一堂に会した日は2019年7月1日だったと明かしています。
MoniとLilyには面識があった一方、当時Moto名義だったMoniとMaikaは、ほとんど初対面でした。
ヴォイスの先生の「神の一声」って感じだったよね。
出典:J-WAVE NEWS「Chilli Beans.がJ-WAVEナビゲーター初挑戦! 初回は結成当時を振り返る」
2022年7月1日にはChilli Beans.公式Xも「結成3周年」と投稿しており、7月1日がバンドの結成日として扱われていることも確認できます。
Chilli Beans.は、完成したバンドメンバーを探して集めたのではなく、先生が3人の可能性を見て引き合わせたところから始まりました。
最初のカバーはLenny Kravitz|演奏しながら互いの音楽を知った
3人で集まったからといって、すぐにオリジナル曲作りへ進んだわけではありません。
最初に3人で合わせた曲は、Lenny Kravitzの「Are You Gonna Go My Way」。
そのほかGreen Dayなどのカバーにも取り組みながら、誰がどんな音を好み、バンドでどう鳴らしたいのかを確かめていきました。
Chilli Beans.として初めて立ったステージは、音楽塾ヴォイスの公開オーディションでした。
またMaikaはJ-WAVEで、3人で組んで最初に受けたオーディションではRed Hot Chili Peppersの「Dani California」を演奏したと振り返っています。
一人で歌うことを思い描いていた3人にとって、カバーは単なる練習ではなく、バンドとして一緒に音を出す方法を覚えていく時間でもありました。
Red Hot Chili Peppersから「Chilli」|バンド名に込めた意味
バンド名の「Chilli」は、3人が共通して惹かれたRed Hot Chili Peppersにつながっています。
結成後、3人で指標にしたいバンドを探していたとき、Red Hot Chili Peppersの音楽やライブパフォーマンスから強い衝撃を受けました。
3人それぞれが前へ出るバンドにしたいというイメージとも重なり、そこから「Chilli」という言葉を取っています。
「Beans」には、まだまだこれから伸びていく“ひよっこ”の自分たちという意味が込められました。
初期のインタビューでは、楽器そのもののサウンドを大切にしたいという“オーガニック”な感覚も「Beans」に重ねていたと説明しています。
名前が決まったことで、別々に音楽を学んでいた3人は、一つのバンドとして輪郭を持ち始めました。
結成直後に生まれた「lemonade」が3人の最初のオリジナル曲
カバー曲で互いの音楽を探ったあと、3人は自分たちの曲を作り始めます。
その最初の1曲が「lemonade」でした。
しかも、この時点ではMaikaもLilyも現在の担当楽器を長く弾いてきたプレイヤーではありませんでした。
Maikaはベース、Lilyはエレキギターを結成時に始めた
Maikaがベースを始めたのは、Chilli Beans.を結成したタイミングです。
それ以前にはアコースティックギターを学んでいましたが、バンドを組むことになって新しくベースを選びました。
Lilyもアコースティックギターの経験はあったものの、エレキギターを始めたのは結成時です。
3人とも本格的なバンド経験はなく、ぴあ音楽のインタビューでは「何からやればいいんだろう?」というほど手探りだったことを振り返っています。
つまりChilli Beans.は、完成されたボーカル・ベース・ギターが合流したバンドではありません。
バンドを始めることと、バンドプレイヤーとして育っていくことが同時に進んだ3人でした。
「お互いを知るため」に作った曲がChilli Beans.の原点になった
「lemonade」は、結成後すぐに作られたChilli Beans.最初のオリジナル曲です。
スタート地点にあったのは、ヒット曲を狙うことより、3人で曲を作りながら互いを知ることでした。
お互いのことをもっと知ろう
出典:EYESCREAM「[Interview]Chilli Beans. 1st EP『d a n c i n g a l o n e』 等身大で紡いだ素直な想い」
Lilyが持ってきたコード進行を土台に、3人で話し合いながら歌詞やメロディーを重ねていきました。
作詞はChilli Beans.名義。
誰か一人が完成形を持ち込んだのではなく、3人がアイデアを渡し合う制作方法が最初の曲から表れています。
「lemonade」は、Chilli Beans.がどんな3人なのかを、3人自身が曲作りを通して知っていった作品でもありました。
Vaundyは音楽塾のクラスメイト|授業の延長から共作へ
「lemonade」にはVaundyも参加していますが、この関係はChilli Beans.が知られるようになった後に始まったものではありません。
Vaundyも音楽塾ヴォイスで学んでおり、Maikaとは同じクラスでした。
Maikaが授業で「lemonade」のデモを流したところ、Vaundyがアイデアを出し、制作に加わっていきます。
EYESCREAMでMaikaが表現したのは「授業の延長」のような感覚でした。
完成版の公式クレジットは、作詞がChilli Beans.、作曲がChilli Beans.とVaundy、編曲がVaundyです。
のちに再び共作する相手との関係が、デビュー前の教室と最初のオリジナル曲から始まっていたことは、Chilli Beans.の音楽史をたどるうえで大きなポイントです。
1st EPから「lemonade」が広がり、最初の大きな転機へ
結成から約2年後、3人が作ってきた音楽は正式なリリースとして外へ届き始めます。
その中心にあったのも、結成直後に生まれた「lemonade」でした。
ここから、3人で互いを知るために作った曲が、Chilli Beans.を多くのリスナーへ知らせる曲へ変わっていきます。
2021年に1st Digital EP『d a n c i n g a l o n e』を発表
2021年8月25日、Chilli Beans.は1st Digital EP『d a n c i n g a l o n e』をリリースしました。
収録曲は「lemonade」「See C Love」「シェキララ」「Digital Persona」の4曲。
公式ディスコグラフィーでも「1st Digital EP」と明記されており、作品リリースの出発点を確認できます。
同年末に公開された音楽塾ヴォイスの公式インタビューでも、2021年の活動を「念願のデビュー」として扱っています。
一方、2022年7月13日には1st Full Album『Chilli Beans.』を発表しています。
そのため、初EP、初シングル、初フルアルバムをすべて同じ「デビュー」にまとめず、2021年の1st Digital EPを最初の正式リリースの大きな節目、2022年を初フルアルバムの節目として分けて捉えるのが自然です。
「lemonade」がSpotifyバイラル1位へ|最初の曲が広がった
『d a n c i n g a l o n e』の1曲目に収録された「lemonade」は、リリース後にSpotify「バイラルトップ50(日本)」でデイリー1位を記録しました。
Billboard JAPANのインタビューでは、ミュージックビデオが公開から約3か月で100万回再生を超えたことにも触れられています。
本人たちも、そこまで広がるとは予想していなかったと振り返っていました。
興味深いのは、外部から大きな企画を持ち込まれて生まれた曲ではなく、結成したばかりの3人が互いを知るために作った最初の曲が、そのまま最初の大きな認知拡大につながったことです。
Chilli Beans.にとって「lemonade」は、最初のオリジナル曲であると同時に、バンドの名前を外へ運んだ最初の大きな転機になりました。
「rose feat. Vaundy」と「Raise」で認知の幅がさらに広がった
「lemonade」で始まったVaundyとの関係は、その一度で終わりませんでした。
2023年には「rose feat. Vaundy」を発表し、Billboard JAPAN「Heatseekers Songs」で2度にわたり1位を記録します。
音楽塾の授業でデモを聴いてもらったところから始まった関係が、数年後にはフィーチャリング曲としてもう一度作品になりました。
同じ2023年には「Raise」がTVアニメ『ONE PIECE』のエンディングテーマに起用されました。
最初のEPで「lemonade」が広がり、初フルアルバムを経て、Vaundyとの再共作やアニメ作品へと接点が広がっていった流れを見ると、Chilli Beans.の歩みは一曲だけで突然始まったものではありません。
YUI、『ハイスクール・ミュージカル』、『ハンナ・モンタナ』、IUという別々の入口から音楽へ進んだ3人がヴォイスで出会い、カバーを重ね、最初に作った「lemonade」。
その一曲から始まった共同制作の線が、Chilli Beans.という3人のバンド史の最初の大きな流れになっています。

