the Tigerの結成史|名古屋の高校から4人体制とデビューまで

the Tigerの結成から4人体制とデビューまでの歩みを、4人の人物イラストと校舎、東京の街並みで示したビジュアル バンド
メンバー担当
Lin(りん)ボーカル・ギター
森泰河(もり・たいが)ギター
秋山祐輔(あきやま・ゆうすけ)ベース
原篤司(はら・あつし)ドラム

the Tiger(ザ・タイガー)は、ローリング・ストーンズやザ・バンドなどに通じるロック、ブルース、ソウルの要素を、自分たちの演奏として鳴らす4人組ロックバンドです。

その始まりは、名古屋の高校の軽音楽部。中学時代から親しかった森泰河とLinが原篤司と出会い、2014年にバンドを結成しました。

ただし、最初から現在の4人だったわけではありません。初期には別のボーカルやベーシストも在籍し、メンバーの入れ替わりを経験しています。

現在のthe Tigerが成立したのは、東京へ活動拠点を移した後、2021年に秋山祐輔がベーシストとして加入してからです。

しかも秋山は、加入するまでベースを演奏したことがありませんでした。高校生のバンドが、なぜ東京で新しいメンバーを探すことになったのでしょうか。

4人それぞれの音楽との出会いから、名古屋での結成、上京、そしてアルバム制作に至るまでをたどります。

音楽史の段階the Tigerの歩み
音楽の原点家庭や友人を通じて、往年のロックやソウルなどに親しむ
バンド結成2014年、名古屋の高校の軽音楽部で結成
初期活動オリジナル曲を演奏し、ライブ活動と自主制作を重ねる
東京への拠点移行2019年頃から東京へ移り、新しいベーシストを探す
現4人体制の成立2021年、秋山祐輔が加入
初の全国流通フルアルバム2024年3月、『Get Ready』を発売
創作の発展2025年4月、2ndアルバム『Black jungle』を発売

the Tigerの音楽ルーツは家族と往年のロックにあった

the Tigerの音楽を形づくったのは、メンバーそれぞれが子どもの頃から親しんできた音楽です。

森泰河とLinは家庭に音楽がある環境で育ち、原篤司と秋山祐輔も、中学時代に出会った曲をきっかけに楽器へ向かいました。

森泰河が育った音楽環境と初めて買ったCD

森泰河の家では、母親が歌い、父親がギターを弾いていました。ローリング・ストーンズなどの音楽も自然に流れており、幼い頃からロックに触れる機会がありました。

音楽との関係をよく表しているのが、初めて自分でCDを購入したときの話です。

小学校高学年の頃、森はお小遣いをためて、ボブ・マーリーのベストアルバム『Legend』を購入しました。

家にある音楽を聴くだけでなく、自分で好きな作品を選び、お金をためて手に入れるほど音楽に引きつけられていたことが伝わるエピソードです。

ギターを始めたのは中学2年生頃。最初の頃はT・レックスなどの曲を練習し、その後、ローリング・ストーンズのギターにも親しんでいきました。

さらに、ザ・バンドやリトル・フィートなど、演奏するメンバー同士の掛け合いが魅力となる音楽にも関心を広げていきます。

後にthe Tigerでギターを弾き、曲を書くようになった森にとって、こうした音楽は単なる懐かしいレコードではなく、自分で演奏したい音楽でもありました。

Linが父親と兄から受けた音楽的影響

Linも、家庭の中に音楽がある環境で育ちました。

父親はバンド活動をしており、Linは子どもの頃からその練習風景を見ていました。父親が使っていた練習場所へ足を運び、楽器や演奏する人たちが身近にいる時間を過ごしていたのです。

ギターを教えてくれたのも父親でした。小学生の頃からギターに触れ、音楽を聴くだけでなく、自分で弾くことにも親しんでいきます。

一方、年上の兄が聴いていた音楽も重要でした。ASIAN KUNG-FU GENERATIONやBUMP OF CHICKENなど、日本のロックバンドの曲にも触れています。

そんなLinの音楽の聴き方に大きな変化をもたらしたのが、中学校で出会った森泰河でした。

森からローリング・ストーンズを教えてもらったことが、Linにとって重要な音楽的転機となります。

父親や兄を通じて知った音楽に、同世代の友人から新しい音楽が加わりました。後に同じバンドで演奏する2人の関係は、すでに中学時代から始まっていたのです。

原篤司と秋山祐輔が楽器を始めるまで

ドラムの原篤司は、最初からドラマーだったわけではありません。

中学時代には日本のパンクロックなどを聴き、映画『BECK』をきっかけに、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやオアシスといった海外のバンドにも関心を持ちました。

原が最初に手にした楽器はギターです。しかし高校の軽音楽部ではドラムを演奏する人が不足しており、そこでドラムへ転向しました。

ドラムを始めた頃は基本的なリズムを演奏することにも苦労したと振り返っています。最初から得意だったからドラムを選んだのではなく、部活動の事情から新しい楽器へ進んだのです。

森と交流するようになってからは、さらにさまざまなロックを聴くようになりました。もともとの音楽の好みに、新しいバンド仲間からの影響が重なっていきました。

一方、ベースの秋山祐輔は山梨県出身。中学時代にギターを始め、ビートルズなどの音楽に親しんでいました。

高校時代までは楽器を演奏していたものの、大学ではバンド活動をしておらず、その後は会社員として働いています。

そんな秋山が社会人になってから出会ったのが、the Tigerでした。

秋山にとってthe Tigerは、もともと一緒に活動していた仲間のバンドではありません。インターネットを通じて見つけ、自分から参加を希望したバンドだったのです。

中学の同級生から始まった2014年のバンド結成

the Tigerの結成を語るうえで欠かせないのが、森泰河とLinの中学時代からの関係です。

2人が同じ高校へ進んだことが、原篤司との出会い、そして2014年のバンド結成へとつながりました。

森泰河とLinが同じ高校へ進んだ理由

森泰河とLinは、中学校の同級生でした。

2人は中学時代から音楽について話し、好きな曲やバンドを共有する関係になっていきます。

高校進学の際に重視したのは、音楽を自由に楽しめる環境でした。

軽音楽部で自分たちのやりたい音楽を演奏できる学校を選び、同じ高校へ進学します。

the Tigerの出発点は、音楽の趣味が合う中学の同級生2人が、高校でも一緒に音楽を続けようとしたことでした。

当時から、既存の曲をただ演奏するだけでなく、自分たちの曲を作って演奏したいという考えがありました。

その高校で出会うことになるのが、ドラムの原篤司です。

原篤司との出会いと初期メンバー

原篤司も同じ高校の軽音楽部で活動していました。ただし、森とLinとは学年が異なります。

高校では、それぞれが別のバンドでも演奏するなど、複数の活動が重なっていました。

そうした軽音楽部での交流の中から、2014年にthe Tigerが結成されます。

ここで重要なのは、結成当初のthe Tigerは現在の編成とは異なっていたことです。

初期には森、Lin、原のほかに、別のボーカルやベーシストも参加していました。現在ボーカルを務めるLinも、最初からthe Tigerで中心的に歌っていたわけではありません。

その後、メンバーの入れ替わりがあり、森、Lin、原を中心とする活動へと変化していきます。

2014年はバンドそのものの結成年ですが、現在の4人体制ができた年ではありません。この2つの出来事の間には、名古屋での長い活動期間と東京への移動がありました。

バンド名「the Tiger」の由来

「the Tiger」という名前は、ギターを担当する森泰河の名前に由来しています。

「泰河(たいが)」という名前の響きを、英語の「Tiger(タイガー)」に重ねたものです。

ただし、森自身が自分の名前を使ってバンド名を決めたわけではありません。

森は2026年のインタビューで、高校の軽音楽部でバンドを作った際、活動のために名前を届け出る必要があり、そのときに決まった名前を使い続けていると説明しています。

高校時代の活動のためにつけられた名前が、その後のメンバー変更や上京を経ても変わらず残りました。

Linがギターからボーカルへ進んだ経緯

the Tigerの音楽を聴くと、Linの力強い歌声が印象に残ります。

しかし、Linが高校でバンドを始めた頃、本人が主にやりたかったのはギターでした。

当時の軽音楽部にはギターを弾きたい人が多い一方、歌う人は不足していました。そのため、Linが歌う機会も増えていったのです。

中学時代からLinの歌声を知っていた森も、歌うことを勧めていました。

Linがボーカルを務めるようになったのは、最初から歌手を目指していたからではなく、仲間との演奏を重ねる中で歌う役割が大きくなっていったためです。

当初はギターへの思いが強かったLinですが、歌う機会を重ねるうちに、ボーカルとして表現することにも向き合うようになります。

その一方で、ギターを弾くことをやめたわけではありません。現在のthe Tigerでも、Linはボーカルとギターの両方を担当しています。

幼い頃に父親からギターを教わった経験と、高校の軽音楽部で歌うようになった経験。その両方が、現在のLinの演奏スタイルに重なっています。

名古屋のライブハウスで育てたオリジナル曲

2014年に結成したthe Tigerは、名古屋を拠点にライブ活動を始めました。

高校生のバンドでは、好きなアーティストの曲をコピーすることも珍しくありません。しかし、the Tigerは早い段階からオリジナル曲を演奏することを重視していました。

高校時代から始まったオリジナル曲中心のライブ

森泰河は高校時代から曲を作り、バンドで演奏していました。

the Tigerも結成後まもなくライブハウスへ出演し、オリジナル曲を中心とした演奏を行うようになります。

曲を作り、メンバーと合わせ、ライブで演奏する。その繰り返しが、バンドの初期活動を支えていました。

Linは当時、ステージで観客に何を話せばよいか考え、学校の授業中にライブのMCを書いていたこともあったと振り返っています。

演奏するだけでも初めての経験が多い時期に、歌うことに加えて、ステージで話す役割にも向き合っていたのです。

名古屋のライブハウスでの活動を通じて、メンバーは曲の演奏方法を変えたり、自分たちの得意な表現を探ったりしていきます。

完成した音源を再現するのではなく、実際に演奏しながら曲を育てるという方法は、その後のthe Tigerの制作にも残りました。

2016年のオーディション受賞と自主制作活動

名古屋での活動を続けていたthe Tigerは、2016年、ヤマハ主催の音楽オーディション「Music Revolution」でグランプリを受賞しました。

高校時代に生まれたバンドが、オリジナル曲を携えて演奏を続ける中で得た重要な結果でした。

その後もライブ活動を続け、地元・名古屋では3枚のミニアルバムを自主制作しています。

東京へ拠点を移した後の2022年には、4枚目となる自主制作ミニアルバム『七転八虎』を発表しました。

こうした活動があったため、2024年の『Get Ready』はthe Tigerにとって初めての音楽作品ではありません。

『Get Ready』は、長年のライブ活動と自主制作を経て発売された、初の全国流通フルアルバムです。

名古屋時代の経験を抜きにして、2024年から突然活動を始めたバンドとして捉えることはできません。

ベーシストを探して上京、秋山祐輔が加入するまで

the Tigerが現在の4人体制になるまでには、何度かのメンバー変更がありました。

大きな転機となったのが、東京への拠点移行です。

上京の背景には、活動の場を広げたいという思いだけでなく、バンドに必要なベーシストがなかなか見つからないという具体的な問題がありました。

名古屋でベーシストが見つからなかった事情

the Tigerは結成後、メンバーの入れ替わりを経験していました。

名古屋で活動していた頃にはベーシストが不在となり、森泰河、Lin、原篤司の3人で活動する時期もありました。

新しいベーシストを探しても、なかなか一緒に演奏したいと思える相手に出会えません。

森は2026年のインタビューでも、名古屋で長く探していたのにベーシストが見つからなかったことを、上京の理由として挙げています。

その状況から、東京へ行けば新しいメンバーに出会えるのではないかと考えるようになりました。

the Tigerの上京には、「新しいベーシストを探す」という、バンドを続けるための切実な目的がありました。

2019年には森が東京へ移り、その後、Linと原も拠点を移していきます。

全員が同じ日に上京したわけではありませんが、東京で音楽を続けるという方向性は共通していました。

東京での共同生活とライブ活動の中断

東京へ出てきた森、Lin、原は、葛飾区金町の家で共同生活を送るようになりました。

金町に住むことになった背景には、家探しの途中で立ち寄った店の雰囲気が気に入ったこともあったと、メンバーは振り返っています。

新しい住まいには楽器も持ち込み、演奏の練習を重ねました。

ところが、東京での活動を本格化させようとしていた時期に、新型コロナウイルスの感染拡大が起こります。

ライブハウスで思うように演奏できなくなった3人は、路上演奏や配信で音楽を届ける方法を探しました。

高円寺や下北沢で演奏したこともあり、その演奏を見たライブハウス関係者との新たなつながりも生まれています。

当時の配信では、ベーシストがいない3人編成をそのまま見せることにも意味がありました。新しい仲間を探しているバンドであることを伝える機会にもなったからです。

共同生活をしながら練習を重ね、出演できる場所を探し続ける日々。その中でも、バンドに必要な最後の1人を探すことは続いていました。

秋山祐輔が未経験のベースを担当した理由

新しいベーシストとの出会いは、インターネット上のメンバー募集を通じて訪れました。

秋山祐輔は、社会人として働いていた頃、メンバー募集サイトでthe Tigerを見つけました。

掲載されていた演奏動画を見て興味を持ち、自分から連絡を取ります。

秋山は以前からビートルズなどの古いロックが好きでしたが、周囲には同じ音楽を好む人がなかなかいませんでした。

そんな中で見つけたthe Tigerの音楽には、自分が好きなバンドと通じるものがありました。

ただし、ここには大きな問題がありました。

秋山はギター経験者でしたが、ベースを演奏した経験がなかったのです。

それでもメンバーと顔を合わせ、演奏への考え方や音楽の好みを共有する中で、加入が決まりました。

秋山がthe Tigerに加わったのは2021年。ベースを始めたのも、この加入がきっかけでした。

加入後にベースを購入し、短期間で演奏を練習。本人は、ベースを始めてから1か月ほどで下北沢BASEMENTBARのステージに立ったと振り返っています。

すでに長く活動していたバンドへ、ベース未経験者が加わるという珍しい形でした。しかし、秋山はギターを通じて音楽に親しみ、the Tigerの演奏にも強く共感していました。

2014年の結成から7年を経た2021年、秋山の加入によってthe Tigerの現在の4人体制が成立しました。

高校時代の仲間だけで始まった活動は、音楽の好みをきっかけに東京で出会った新しいメンバーを迎え、次の段階へ進んだのです。

4人で作る音楽と『Get Ready』への道

秋山祐輔の加入後、the Tigerは4人でのライブ活動を本格化させました。

そこから生まれた大きな成果が、2024年3月13日に発売された初の全国流通フルアルバム『Get Ready』です。

このアルバムには、名古屋時代から続く曲作りの方法と、東京での生活から生まれた新しい曲が収められています。

森泰河とLinの曲作りを4人で仕上げる方法

the Tigerでは、森泰河とLinが曲の着想や歌詞、メロディーを生み出す中心的な役割を担ってきました。

しかし、作曲者がすべての楽器の演奏内容まで完成させてから、ほかのメンバーに渡すという方法だけではありません。

新しい曲をメンバーで演奏し、ドラムやベース、ギターの動きを試しながら形を整えていきます。

ライブで演奏してみることで、それまで気づかなかった部分が見つかり、アレンジが変わることもあります。

曲を書いた人だけで完成させるのではなく、4人で音を出す過程そのものが楽曲制作の重要な部分になっているのです。

この方法では、それぞれの演奏者が持ち込むアイデアも曲の個性になります。

原のドラムと秋山のベースが組み合わさり、森とLinのギターが重なる。その場で演奏する4人の反応によって、曲が仕上がっていきます。

森は2023年のインタビューで、1人でギターを弾いて確認するよりも、メンバーで一斉に演奏した方が楽しいという考えを語っています。

曲の完成度を高めるためだけでなく、4人で演奏すること自体を大切にする姿勢が、the Tigerの制作方法を支えています。

「金町」と「働き者の歌」が生まれた背景

『Get Ready』に収録された「金町」は、森泰河が東京へ出てきたときの体験から生まれた曲です。

東京への移動を振り返る中で、森の記憶に残っていたのが引っ越しの日の光景でした。

メンバーはバンを借り、3人分の荷物と楽器を積み込んで移動しました。車内は荷物でいっぱいになり、夜中に出発したといいます。

そのときの記憶を思い出しながら、森が作ったのが「金町」でした。

曲のタイトルは、東京で共同生活を送った葛飾区金町に由来します。

「金町」は、the Tigerが新しい活動の場へ向かったときの実体験を音楽にした曲です。

2023年11月29日に先行配信され、その翌日には公式ミュージックビデオも公開されました。

アルバムタイトルの『Get Ready』も「金町」に登場する言葉から取られています。

そのため、「金町」をアルバムの最初に置くことは、メンバーにとって自然な選択でした。

もう一つ、制作背景が印象的な曲が「働き者の歌」です。

こちらも森が作詞作曲を担当していますが、曲が生まれたきっかけは「金町」とは異なります。

森はこの曲を、自分の両親に向けて書きました。

普段は歌詞を一気に書くことも多いという森ですが、「働き者の歌」では何日もかけて言葉を考え、メロディーと歌詞を一緒に作りながら、繰り返し表現を見直しました。

本人が曲作りに時間をかけたことを語る、具体的なエピソードです。

この曲についてはザ・バンドを思い起こさせるという感想も寄せられています。ただし森は、ザ・バンドのような曲にしようと意図して書いたわけではないと説明しました。

好きな音楽から受けた影響と、特定の作品を意識して作曲することは、必ずしも同じではありません。

上京の記憶を書いた「金町」と、両親への思いから作った「働き者の歌」。それぞれ異なる経験が、the Tigerの代表的な楽曲へと結びついています。

ライブの熱を残すアナログテープの一発録り

『Get Ready』の録音が行われたのは2023年夏です。

それまで自主制作で作品を発表してきたthe Tigerにとって、初めての全国流通フルアルバムは新たな制作経験となりました。

録音では、デジタルで各楽器を細かく重ねる方法ではなく、アナログのマルチトラックテープレコーダーを使った一発録りに取り組みました。

メンバーが一緒に演奏し、その場で生まれた音のまとまりを記録する方法です。

もちろん、演奏を一度しかしなかったという意味ではありません。納得できる演奏になるまでテイクを重ねながら、基本的にはバンドが同時に演奏する形を大切にしました。

狙っていたのは、ライブで演奏する4人の息づかいや音の勢いを、そのまま作品に残すことでした。

原篤司は、録音した音の細かな部分まではっきり聴こえ、それまでの録音とは異なる感覚だったと振り返っています。

Linも「働き者の歌」などでは、ギターを演奏しながら歌う形で録音に参加しました。これは本人にとって、レコーディングでは初めての経験でした。

森が曲を書き、全員で演奏しながら形を整え、その演奏をまとめて録音する。

高校時代から続いてきたthe Tigerの曲作りが、アルバム制作でも生かされました。

こうして2024年3月13日、『Get Ready』が発売されます。

自主制作ミニアルバムを4作発表した後にたどり着いた、the Tigerにとって初の全国流通フルアルバムでした。

『Black jungle』で深まった創作とバンドの転機

『Get Ready』の発売から約1年後、the Tigerは2025年4月23日に2ndアルバム『Black jungle』を発表しました。

前作と同じく、アナログテープを使ってバンドの演奏を記録する方法を採用しています。

一方で、楽曲の生まれ方や作品に込める言葉には変化がありました。

Linが作詞作曲を広げたきっかけ

『Black jungle』で特に大きく変わったのが、Linの作詞作曲です。

アルバム全10曲のうち、7曲でLinが作詞を担当。そのうち6曲は作曲も手がけました。

この変化は、単に作曲の担当を分け直した結果ではありません。

Linは以前、歌詞を書くことを得意としていませんでした。メロディーや歌を作ることに比べて、言葉を選ぶ作業に難しさを感じていたのです。

転機になったのは、『Get Ready』に収録された「夏~思い出せないメロディー~」の制作でした。

この曲では、三宅伸治、森泰河と共同で曲作りに取り組みました。

一緒に考えながら歌詞を作る経験を経て、Linは作詞そのものに楽しさを感じるようになったと語っています。

そして次のアルバムでは、自分でもさらに多くの曲を書きたいと思うようになりました。

『Black jungle』でLinの楽曲が増えた背景には、共同制作を通じて歌詞を書くことへの意識が変わった経験がありました。

高校時代にはギターを弾きたいという思いが強く、歌う役割を引き受けたLin。その後、自分の言葉で何を歌うかという問題にも、より深く向き合うようになっていきました。

2025年の2ndアルバムで変わった表現

『Black jungle』では、楽曲のテーマだけでなく、メンバーが持ち寄ったアイデアによって演奏の形が変わっていく様子も見えてきます。

例えば「4hearts」は、Linが当初思い描いていた演奏の方向と、完成したアレンジが異なる曲です。

LinはAC/DCのような力強いロックを意識していましたが、森がギターのアルペジオを加えるなど、メンバーの演奏によって曲の印象が変わっていきました。

秋山もベースラインを考える際に別の音楽を思い浮かべており、4人が同じ曲を聴きながら必ずしも同じ完成形を想像していたわけではありません。

それでも、全員のアイデアを組み合わせることで、一つのthe Tigerの曲として完成していきます。

また、Linが作詞作曲した「美しい花」では、言葉を先に考える方法を採りました。

この曲には、苦しい状況にある人に向けた思いが込められています。歌詞を伝えるため、メロディーや演奏のあり方も意識して作られました。

『Black jungle』には、ギターを前面に出したロックから、言葉を大切にした楽曲まで、異なる表現が収められています。

録音方法は前作から大きく変えず、作詞する人の経験や、メンバーが持ち込むアイデアの幅を広げていったことが、2作目の大きな特徴です。

森泰河が中心となって始まった曲作りに、Lin自身の言葉や発想がさらに加わるようになりました。

2026年のFUJI ROCK FESTIVAL初出演

名古屋の高校で結成されたthe Tigerは、東京への拠点移行、秋山祐輔の加入、アルバム2作品の発表を経て、ライブ活動の場を広げていきました。

2026年7月25日には、FUJI ROCK FESTIVAL ’26に初出演。会場内の「苗場食堂」で演奏しました。

高校時代にオリジナル曲を演奏し始め、名古屋のライブハウスを回っていたバンドが、国内の大型音楽フェスティバルにも出演するようになったことを示す出来事です。

ただし、the Tigerの歩みを一つの受賞や出演だけで説明することはできません。

森泰河とLinが中学時代に出会ったこと。原篤司と高校でバンドを始めたこと。ベーシストを探すため東京へ移り、秋山祐輔が加わったこと。

そして、4人で演奏しながら曲を仕上げ、その音を作品に残してきたこと。

the Tigerの音楽は、異なる場所で音楽を好きになった4人が、出会いと演奏を重ねる中で形づくられてきました。

バンド名には高校時代の名残があり、「金町」には上京の記憶があり、『Black jungle』には曲を書くことへの新しい向き合い方が表れています。

それぞれの曲やアルバムには、4人が実際に過ごしてきた時間と、音楽を作る方法の変化が刻まれています。

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